Jewelry designer
ASAMI FUJIKAWA INTERVIEW

初めての出会いを鮮明に覚えている。店舗のスタッフと食事に行った時に、そのスタッフがリングを着けていて、思わず「見せて!!」と言ってしまったぐらいのインパクトがあった。
僕はキレイな曲線が凄く好きで、そこに敢えて力強さを加えられたプロダクトはドンズバでした。
デザイナーのASAMIさんに初めて会った時、プロダクトと同じく透き通ったピュアさの奥に何か力強さを感じた。そんなベールに包まれたASAMIさんの内面を知るべく、先日オープンしたばかりの彼女のお店を訪ねた。

ーー経歴を窺うと、二十代の初めに渡英し、デザイナーや写真家のアシスタントとして活動されたとありました。それはジュエリーデザインを勉強するために行かれたんですか?

高校生の頃からロンドンに興味がありました。それで東京の文化服装学院を卒業した後、すぐに渡英したんです。そこにはデザインや写真の仕事をしている大人の人が周りにたくさんいたんですね。 ビジュアルやイメージを創るのが好きで、セレクトショップのVMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)や動画を作ったりしたりしていて。ファッションは好きだったけど、洋服を作るのは好きではなくて。渡英する前から建築物に興味があって、すごく好きになっていって、美術館でアート鑑賞するよりも、建築物を観ることのほうが多くなり、たくさんの時間を過ごしました。そこから立体的なビジュアルに興味を持ち始めました。ジュエリーは小さくして立体的で、置いていてもかわいいんです。そこからですかね、表現したいものを形にしてみたいと思い始めたのは。それで帰国後、一人でジュエリーを作りはじめたんです。

ーーそこからジュエリーブランドのデザイナーになるというのは結構なことだったと思うのですが。そこまで行くのにはセンスとか努力とかいろんな状況が重なるとは思うんですけど。

ジュエリーを見てもらいたかったというよりは、イメージを見てもらいたかったです。デザイン画をおこさず、製作をしてるんですね。ビジュアルだと動画が好きで、ロンドン留学中にモダンバレーやコンテンポラリーダンスを観ていて、それで今までにない人の動きを創作していく芸術を深く探求していました。コンポンテラリーダンスは、撮影の際の最も強いインスピレーションです。

ジュエリーを本格的に作りはじめたのは2015年で、それと同時に動画も撮りはじめて、それを動画を編集してウェブサイトにアップしていったんです。なのでファッション以外のところからジュエリーデザインに落とし込んでいることが多いんですよ。本当にいろいろな方に見てもらいたくて、見せるということで展示会に出展したり、期間限定の“POP UP SHOP”を開催したり。初めてのPOP UP SHOPでは、石をマーブル状に塗ってオブジェにしたりして、すごく楽しかったです。ジュエリーデザインに限らずいろんなことを経験できて。

ーーアートが好きだった女の子が、ひょんなきっかけでデザイナーになり、ニューエイジ的な大注目のジュエリーブランドに。話題のインスタグラムやコミュニティを形作るまでに至ったのは何故なんでしょうか?

魅せる分野に対する意識がすごく高かった。それはそれで、やり過ぎてそこに執着しちゃうのも良くないなって思いますけど。でも、あまり人目を気にしないで表現したいことを見つけたことが大きかったですね。通常だったら、みんなにイメージを伝えてから撮影すると思うのですけど、一回もそういうことはしていなくて。その場でスタイリングと背景をきめて「はい、カットって」。いま自分がどう感じているかを表現しています。たったひとつのジュエリーでも女性の印象を変化させる、美しい曲線や印象的なラインをディレクションしています。それをコツコツやっているんです。

ーー今だとブランディングするにもインスタグラムがあって、それまでだったらまったく接点のなかったような人にも自分を表現できるようになって。そのぶんオリジナリティが必要となりますよね。

そうですね。カメラマンもメイクしてくれる方もずっと前から友達で知っている方です。すごくラッキーで、インスタグラムで見つけたモデルさんもいますし、周りにいる友達だったり、ロンドンに住んでいて日本に来る時にお願いしたり。でもきちんと、イメージにあう方に依頼してるんです。自分の頭の中ではイメージがはっきりしているんですが、第三者に伝えようとするとむずかしいじゃないですか。なので知っている方のほうがビジュアルイメージを伝えやすいんです。たとえば広告ビジュアルをプロの方に依頼するとクオリティが高いものができるじゃないですか。それはそれですごく素晴らしいことなんですけど、内面のイメージや見せたい表現方法が違ってくるのです。昔からの友人知人にお願いした方が、ジュエリーで印象を変化させたい女性へむけてイメージに近いものが作れるんです。

ーーいよいよオープンですよね。お店を形作るまでのコンセプトやこの場所を選んだ理由は何だったでしょうか。

外苑前が好きなんです。理由はないんですけど。神宮前はおしゃれなお店が多いですし、この通り(通称キラー通り)は、国際的なコンテンポラリーアートを多く展示するワタリウム美術館が向かいにあったり、インテリアのお店が多くて、ファッションよりアート寄りで建築要素もあって、いいあんばいでよいかもって。この先インテリアとかもデザイン出来たらいいなって。イヤーカフ、ピアス、ブレスレット、大きさを変えてインテリアデザインに落とし込んでもおもしろいかなって(笑)。

古いものが好き。とか、新しいものが好き。ではなくて、”古くも感じるし、新しくも感じるもの”が好きなんですよね。お店に設置している什器も上下にひっくり返したデザインしているんですよ。ジュエリーを置いているプレートは、コーヒーにミルクを垂らしたときのマーブルっぽいかんじをイメージしてるんですね。

壁はあえてざらざらで、お店の照明や窓から入ってくる日の光で壁の色が変わるんです。朝はグレーで、夜はベージュに近い赤み掛かった色になる、この雰囲気が気に入っています。一週間に一度、お花と花瓶も替えたり、「レモンとパズル」と呼んでいる鏡を置いたりしています。アートとしての表現を大切にしているショップの内装、什器の全てを一から製作して、より一層”ASAMI FUJIKAWA”の世界観を感じられる空間を目指しています。

ーーそれで日本に帰ってきてからもデザイナーとして大活躍されています。フジカワアサミさんが掲げるコンセプトは、“ATTENTIVENESS TO SIMPLICITY ”ですが、何故こういったコンセプトを掲げられているのですか?

そうですね。根本的に自由にジュエリーを描きたくて、イメージ通りのビジュアルを表現したいっていう欲求があって、ファッションとしてはもちろん、アートとしての表現も大切にしています。シンプルでありながら存在感のあるデザインにすることも大事にしていますね。ひねりを加えた女性らしく柔らかな美しい曲線を大切にしたリングやピアス、ブレスレット、イヤーカフなどシンプルながらもしなやかで芯が強い独特のボリューム感あるデザインをベースにしています。

女性の方は重いリングを好まないのですが、シルバー好きからすると、重量を減らすのは絶対に嫌で、あえて中を削らず、シルバーの重みを残しています。職人さん泣かせです。重量感をしっかりと取って強さを出しますが、“ぷっくりシリーズ“に留まらず、どのアイテムも線は絶対に丸線、尖ったアイテムでも滑らかに、丸みを帯びツルンとしている鏡面磨きが“ASAMI FUJIKAWA“のコンセプトでもあります。

ーーたしかにそうですね。一番初めにいいなと感じたのが、“ぷっくりシリーズ ”を見た時で。いつも耳慣れない言葉と、まさにそれを象徴するデザインだなと思って。強く主張するわけでもなく控え目なのに印象に残りますね。今後の新商品やアートとしての活動などありますか。

あっ、でも“ぷっくり“は名前じゃないんですよ。リングコレクションだけでなく、アクセサリーに名前はつけてなくて(笑)。なぜ品番で呼んで名前をつけないのかは、 美術館に行って初めにディスクリプションを読む人と、読まない人がいますよね。私は後者で、絶対に先には読みません。 自分で感じて、あとから答え合わせ?のようなものでいいのかと思うから。私のジュエリーに、ディスクリプションはないのです。名前をつけると潜在意識ができてしまい、その人の本当に感じたままじゃないように映るのかなと思って。好きなように感じていただければ、それで満足なのです。

今回のリングコレクションの1/4サイズを1つ1つ組み合わせて、独特のボリューム感のあるコレクションとなっているのが、新作で上質さを漂わせる大ぶりのチェーンシリーズです。名前はつけていないんですけど、チェーンシリーズは、2つデザインあって、「レモンとパズル」って呼んでいます(笑)。

他の注目アイテムはネックレス・ブレスレット・イヤーカフです。 イヤーカフは幅が外側に向かって太くなっているデザインにして、 ピアスの穴が開いていなくても付けられるオシャレがより楽しめるアイテムにしています。 ピアスとの重ね付けもオススメです。ショップ限定販売のピアス・ノベルティーのご用意もあります。新作につきましては、11/1より表参道直営店・オンラインショップにてオーダー開始になります。

ーーそうやって何かを深く探求するのは良いですよね。「商品に対する愛情を注いでいくこと」はURBSのコンセプトでもあるんです。

そうなんですね。たとえば「そのモノ」の背景やストーリーを打ち出していき、今後はファッションアクセサリーだけに限らずインテリアデザインなど、ライフスタイル寄りのプロダクトまで幅広くアートデザインしていきたいですね。

ーーあらためてジュエリーデザインをやっていてよかったと思うことはどんなことですか?

お店が終わった後、お客さんたちがみんなニコニコして、幸せそうにジュエリーをつけて帰って行かれるんですが、こういう仕事でありがたいなって思います。私の仕事って、いまは枠を作っている段階なんですけれど、自分も嬉しくなるって、本当によいなと。だからお客さんとのコミュニケーションをもっと大事にしたいと思っているんです。それはそれでやっぱり共鳴し合ってるから。本当に気に入った人に使ってもらえればいいやって。

インタビューを終えて

想像通り、「純粋」という言葉がピッタリのお方でした。
僕も実際にお会いしたのが3回目。
まだ彼女の事を深く知らない中でのインタビューはとても新鮮で興味深いものであった。
特にコンセプトやルールは決めずに、「自分の表現したい感情を純粋にプロダクトにする」そんな言葉が彼女らしかった。
ゴールを決めずに、自分が見てきた記憶にあるモノ、自分が経験してきた記憶にあるコト、それを純粋に組み合わせて行きながら出来上がったプロダクトは、まさに「オリジナル」であって誰も真似できない。
そんな部分が見えないインパクトとして、僕を突き動かしたのだろう。

フジカワアサミ
シルバー好きによる、シルバー好きのために手がけるジュエリーブランド。文化服装学院を2009年に卒業し、その後、ロンドンに渡英し、ファッション&アートを勉強する。2015年、日本に帰国後、フリーのジュエリーブランド・デザイナーとして活動をスタート。“ATTENTIVENESS TO SIMPLICITY”をコンセプトとし、ファッションアクセサリーとしてだけでなく、インスタレーション表現などでアートとしてのブランディングもおこなっている。2018年11月1日より東京都渋谷区神宮前3丁目(ワタリウム美術館の前)に初の路面店をオープン。
村手 謙介
URBSブランドマネージャー
アーバンリサーチで長年バイヤーを務め、今年の4月から現職を担当。最近、自分の体を鍛える事が趣味で、ボディチェックが毎朝の日課。
https://www.instagram.com/muraken_world/
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