TEÄTORA
DAISUKE KAMIDE INTERVIEW

もはや不動の地位を築きあげたと言っても過言ではない「TEATORA」。
一番最初の展示会に伺った際に、「こういう洋服が欲しかった」と思い、「全部買います!!」と言った記憶が蘇る。

当時は、機能的な要素を持ち合わせて格好良い洋服がほとんど無かった。あってもロゴが入っていたり、過剰なスペックであったり、”ちょうど良い”というポジションの”日常着”は誰もやっていなかった。このような中で「TEATORA」というブランドは、風穴を開けるかのように現れた。今や”機能的な洋服”という言葉だけを見ると、街中に存在する。その中で、「TEATORA」というブランドが未来をどう捉え、そしてどう進化させて行くのか。展示会で衝撃を受けた「TEATORA初のダウン」についてデザイナーの上出氏に伺う事にした。

TEÄTORA/テアトラを始めたきっかけ

「TEATORAを始める以前は10数年、雇われデザイナーをしていたのですが洋服を作るプロセスに強い疑問がありました」。

秋冬コレクションのアイテムが整然と並ぶ<TEATORA Sendagaya Headshop>で、上出氏は自身の過去をそう振り返る。2013年<TEÄTORA/テアトラ>をローンチ。デビューは、わずか2型のボトムス。2型で勝負に出たのには理由があった。

例えば家電にしても車にしても半年や1年、時には数年をかけて社運を賭けた1型を開発しています。ところが洋服は1シーズンに100型や200型の新作を作っていく。家電や車に限らず、製菓業界や文房具業界、どこまで業種を広げて見てもこんな無茶苦茶な業種はない。こんなことをしていては、本当の開発ができるわけがないという思いからTEATORAをはじめ、100型200型作らない代わりに、その全ての費用や時間を1型に極端に偏らせることで、圧倒的な1型を開発するという理念のもとスタートしました。

ただ、この方法は開発費、開発期間、全てのリスクにおいて、まさに社運を賭ける行為ですので、どうせ人生を賭けるのであれば仲間や尊敬する人たちの役にたつような服を作りたいなと考え始めたのがきっかけです。

PRODUCT、HP、HEADSHOPデザインのインスピレーションをどういう部分から受けているのか

それぞれで方法が違いますが、プロダクトデザインに関していえば、何かからインスピレーションを得て、こういうことやってみようというのは正直あまりありません。ただ”必ず実体験をもとにする”というルールのみ自分に課しています。

知っているとか、見たことある、ではデザインしてはいけないというルールです。

インスピレーションとは少し違いますが、シンプルに言えば雪山に登ったことがない人間からは、雪山のためのギアは生まれない。 ファーストクラスに乗ったことがなければ、ファーストクラスの座席設計はできない、という理屈です。

例えばSOLOMODULEというシリーズは

①長時間フライトのストレスを軽減する
②フルフラットシートのような快適さ

という体験が必要だったのでファースト、ビジネス、エコノミーを交互に何回も乗りわけることで開発前の検証や実証テストを行ったりしています。

HPや直営店は、着用して感じるプロダクトの開発と違って、視覚的に感じる部分が強いので、視覚的効果を強調するサイエンスフィクションの世界観や手法を取り入れています。例えば直営店はかなり奥行きのある珍しい物件だったので照明や什器の連続と、合わせ鏡を多用することでインターステラーの5次元空間のようなスペースをイメージしました。HPはSFメカニックの設定本をイメージしています。

機能性を謳うブランドが増えてる昨今、どう差別化を考えているのか。価格帯やデザイン、ブランディングについて

TEATORAは開発において安くすることを目的とせず、利益率をあげることも目的とせず、極論、売り上げを伸ばすこと自体も目的としていません。利益を目的の片隅にでもおいてしまうと開発目的が必ずぶれ、売るための服になってしまうからです。

開発において最重要にしているのはそもそも必要であるのかということと、圧倒的であるかどうかということです。

そんな作り方をしているので、いくら開発費用をかけたとしても販売しない商品もたくさんありますし、到底他社では許されないであろう高原価なプロダクトばかりです。

それでも圧倒的であることこそが最重要であると考えています。
それは僕自身がそうなのですが、気に入ったものは何枚も買います。
圧倒的プロダクトを体験した時、今までのプロダクトには二度と戻れないのです。
ありがたいことに、僕と同じような買い物の仕方をされる方が多く、実際うちは多くのリピーターに支えられています。

もうひとつ、語弊を恐れずに言うのであれば、僕たちが目標にし、開発、研究しているのは一流のビジネスウェアでありジャケット型の便利な服ではないという考えです。

例えば、機能性というと防水だとか、伸びるとかになりがちです。
TEATORAにもそういった機能がありますが、TEATORAにとってこれらはあくまでB面の要素でしかありません。

TEATORAが最重要視しているA面機能はビジネスのTPOに耐えられるか。

快適さはあたりまえとした時、ビジネスのTPOに耐えるということこそが最重要機能なのです。

そのため、TEATORAでは伸びるとか通気がいいといった着用者自身が感じる主観的機能の研究に加え、一流とか高級といった着用者以外の人が感じる客観的機能の研究があります。例えば一流のスーツや高級時計や、高級車に近いかもしれません。仮に安くコピーした商品が市場に存在していたとしても、うわべのコンセプトだけコピーした商品で有る限り、安いからこっち。似ているからこれでいいや。といった価値観に侵犯されにくい領域です。

逆説的に言えば、防水だろうが、伸びようが、便利なだけでは参入できない領域でもあります。

僕たちが目指しているのはその領域に入り込む一流のビジネスウェアでありジャケット型の便利な服ではないということです。

前置きが長くなりましたが、差別化に対する答えは、全費用投入型の開発ルールと、一流の体験をしないと、一流をデザインしてはいけないという開発ルール。TEATORAならではの二つの厳しい開発ルールこそが、他社では真似できない商品開発であると考えています。

それを積み重ねることで例えるならスマホじゃなくてiPHONEじゃなきゃだめだ、というように、ジャケット型の便利な服じゃなくて、TEATORAのじゃなきゃ駄目だ。となるのであれば開発者冥利に尽きると思いを巡らせているところなのだそう。

今回満を持して登場のダウンについて

TEATORAはビジネスウェアなので、正直フードは必要ないんですが。実は<SOUVENIR HUNTER>というフード付きのコートがあるんです。これはビジネス出張とはいっても、観光のひとつもするよ。という方もいることを想定して、都市移動用に開発した、テアトラとしては珍しいオフシーン用アウターです。

正直なことをいうとダウンやフリース、レインウェアといった、アウトドアメーカーを連想する商品の開発は基本的に避けていました。ただ、観光という都市移動を目的にした場合、ならではのダウンウェアが開発できる!ということで2年ほど前に開発を始めました。

今回のダウンはこのSOUVENIR HUNTERをベースにしてあり、コンセプトは ”圧倒的ストレスフリー”。
裏コンセプトは”雪山へ行けないダウンウェア”です。

これだけ聞くと不安になりますが、極地使用を目的としたダウンウェアは、生命の危機すらも想定にしているので、濡れない、熱を逃がさない、を大前提にして作られています。命を奪いうる極寒の環境設定なので当然の機能です。

ただこれを都市での移動に持ち込むと、命を守るはずのアウターが一転してストレスフルなアウターになる。
暑く、蒸れ、締め付け、ごわつき、嵩張り、なんならダウンなのに重い。

これには明確な原因があります。冬の都市移動の道中は、暖房だらけであるということ。
電車も暑い、駅も暑い、タクシーも、レストランも、店内も、どこもかしこも暑い。
いわば雪山装備で熱帯を歩くようなもの。

TEATORAで目指したのは都市移動のための圧倒的ストレスフリー。だからこその雪山に行けないダウンウェアです。 

都市移動においてはダウンウェアであっても熱は常に逃がそうという発想から袖口も裾も広く開放。
適度に温めつつ冷たい外気をむしろ積極的に取りこむ。

次に、重さ、硬さ、蒸れの原因たる、撥水、防水にまつわる全ての仕様を排除することで圧倒的な軽さ、柔らかさ、通気性を手にしました。特に軽さに関しては圧倒的でロングで約750グラム、ショートで 約600グラムという、脅威的な軽さです。熱をあえて逃がし、圧倒的に軽く、柔らかく、かさばらず、締め付けないことで、着用していることすらも忘れさせてしまうような圧倒的ストレスフリーのダウンウェア。

水も弾かず、冷気もとりこむので、雪山には行けませんがぜひ観光の際は都市移動でご利用ください。

今後の新しい動きなどあれば

縫製製品の段階から金型成形の製品開発がスタートしています。

第一弾はJKTハンガーです。ネオジム磁石を用いることでフックレスにしてありスタッキングができます。スタッキングすると透明の肋骨みたいでSF感が凄いんですよ。

これは非売品で、今のところ所販売予定はありませんが、様々な金型成形の商品を開発中です。

縫製製品より開発期間が長期化しているので、お観せできるまで随分と時間がかかっていますが従来の既製品の作り方そのものを変えてしまうようなプロダクトを準備していますので、完成した際はぜひご覧ください。

インタビューを終えて

いつも通りな冷静な口調からひしひしと伝わってきた熱い想い。そして洋服という概念を超えて行く考え方に終始圧倒された。

昨今の洋服というカテゴリーで見ると決して手の出しやすい価格ではない。しかしながら、何故「TEATORA」が選ばれるのか。そこには確かな理由があった。インタビューの中で、”洋服に魂が宿っている”という話をさせて頂いた。

僕は買い付けをする仕事に就いてから、この言葉を幾度と話した記憶がある。
それは、ハンガーに掛かっている姿が違うのである。そんな事はあり得ないのですが、”生き物”のように何かを発しているように見えるのです。

”洋服に魂が宿っている”という言葉がまさにピッタリとハマってしまう。上出氏の言葉をお借りして言うのであれば、圧倒的な「A面」がそうさせるのだろう。

上出 大輔
2013年<TEÄTORA/テアトラ>をローンチ。デビューは、わずか2型のボトムス。クリエーターのパフォーマンスを向上させることを目的に開発された頭脳職のための機能服を少数精鋭で展開。様々なTPOに対して研究、開発されたTEATORAのウェアは都市生活をよりスマートにしている。
http://teatora.jp/
村手 謙介
URBSブランドマネージャー
アーバンリサーチで長年バイヤーを務め、今年の4月から現職を担当。最近、自分の体を鍛える事が趣味で、ボディチェックが毎朝の日課。
https://www.instagram.com/muraken_world/
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